2015年04月01日

やまたのおろち ( 奥出雲 )

 むかし、スサノオノミコトという、強い神様がいました。 ある日、ミコトが、さびしい山の中を歩いていると、はしが二本、谷川を流れてきました。
「おや、こんな山の中にも、人がいるらしいぞ」
 ミコトはそう思って、谷川をどんどん歩いて行きました。

 しばらく行くと、一けんの家がありました。 中をのぞいて見ると、ひとりの女の人を間に挟んで、おじいさんと、おばあさんが泣いているではありませんか。 ミコトはふしぎに思って、声をかけました。

「あなたがたは、何が悲しくて、そんなに泣いているのですか。」
 すると、おじいさんが振り向いて答えました。
「この娘が、やまたのおろちに食べられてしまうのです。 それが悲しくて、泣いているのでございます。」
「やまたのおろちだって?」
と、ミコトは聞き返しました。 おじいさんは、恐ろしそうにからだをふるわせて、いいました。

「はい、やまたのおろちというのは、一つの胴体に、顔が八つ、尾が八つあるという、恐ろしい大蛇でございます。 わたしたちには娘が八人いましたが、毎年ひとりずつ食べられて、今ではこの、クシナダ姫ひとりになってしまいました。 でも、この娘も食べられてしまうのです。 きょう食べにくるという知らせがあったのです。」

 この話を聞くと、ミコトは、姫を助けてやろうと思いました。
 さっそく、おじいさんとおばあさんにいいつけて、酒を入れた大きなかめを、八つ用意させました。 クシナダ姫に化けたミコトは、酒のかめを家の前に並べると、家の中にすわって、おろちの現われるのを待ちました。

 やがて、空に真っ黒な雲が現われました。 黒雲は、たちまち空いっぱいにひろがって、ものすごいあらしになりました。 ぴかっと稲妻が光ったかと思うと、その光の中から、怪物が現われたのです。
 ぎらぎら光るうろこ、八つの大きな頭、まっかに燃える目。 かっと開いた口には、つるぎのような鋭いきばと、ほのおのような舌をのぞかせています。

 おろちは、家の前にならんだ酒がめに気づいたようです。 喜んで、八つの首を八つのかめにさしこむと、グクリゴクリと音をたてて、酒を飲みはじめました。 やがて酒を飲みほすと、おろちは酒によって、眠ってしまいました。

 この時とばかり、ミコトはかくし持っていたつるぎを抜いて、ぱっとおどり出ました。 ミコトは、すこしも恐れず、八つの首をつぎつぎに切りおとし、八つの尾にも切りかかりました。 すると、さいごの尾に切りつけたとき、ガチッと音がして、火花が散りました。 見ると、尾の中にきらりと光る物があります。 取り出して見ると、それは、今まで見たこともないほどの、りっぱなつるぎでした。

「おお、みごとなつるぎだ!」
と、ミコトは喜んで、そのつるぎに、あめのむらくものつるぎと、名をつけました。

 おろちが死ぬと、ものすごかったあらしもしずまりました。 おじいさんと、おばあさんは、たいそう喜びました。 そして、ミコトに向かっていいました。
「ありがとうございました。どうぞ娘を奥さんにしてください。 あなたのような強いお方の奥さんになれば、きっと幸せになれるでしょう。」

 ミコトは、こうして、クシナダ姫をお嫁さんにしました。
 また、怪物の尾から出たつるぎは、日本の国の宝になりました。

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参考書籍 ママお話聞かせて-夏の巻
     ※参考図書を元に、文章を書いています。

画 ひよこ  ※参考図書の掲載画を元に、イラストを描かせていただきました。
posted by ひよこ at 00:00| 日本神話 | 更新情報をチェックする