2013年05月09日

おけさねこ ( 新潟県・佐渡 / 佐渡おけさ )

昔、佐渡島の海辺に、にすけやという魚屋さんがありました。
にすけ夫婦は、たいそうな働き者だったそうで、お店もたいへん繁盛していましが、ある時からさっぱり繁盛しなくなってしまいました。
にすけさんは、お金を借りてお店を立て直そうと努力しますが、情況は悪くなるばかりでした。
二人は相談して、この土地を離れる事を決めました。

にすけ夫婦には子供はありませんでしたが、あさという名の猫を子供のように可愛がり、一緒に暮らしていました。
ある晩のこと、にすけさんはあさを膝にのせ話しかけました。

「 あさや。 あさと暮らしてから、もう十六年になるなぁ。 わしらとあさと、いつまでもいっしょにこうして暮らせると思ってたんだが、とうとう夜逃げをせねばならなくなってしまった。 情けねえことだ・・。
 あさ、可哀想だが、お前を一緒に連れて行くことが出来ない・・。 どうか許しておくれ。 」

あさは、二人の顔をじっと見上げると、「 にゃぉ~ん 」と鳴いて、姿を消してしまいました。

「 わしらの言葉がわかったんじゃろうか・・・。 かわそうなことをしてしまった・・。 」


それから何日か過ぎた頃でした。
にすけ夫婦が、旅支度をしていると、誰かが扉をトントンと叩く音がする。
見ると、美しい娘が立っていて、娘は二人に話しかけました。

「 わたしの名は、けさと申します。 どうぞ、こちらのお店で働かせていただけませんでしょうか。 」

二人は驚いて、顔を見合わせました。

「 おけささん、お気持ちはありがたいんじゃが・・・。 たいへん申し訳ないが、今日限りでこの店をたたんで、わしらはよそへ行こうと思ってるんじゃ。 どこか他の店をあたってくだされ。 」

にすけさんはそう言って断わりましたが、けさは全くあきらめませんでした。
「 わたしはお二人が優しいお心をお持ちなこと、良く存じ上げております。 お願いです、どうぞお二人のお傍で働かせてください。 それから、たいそうお困りの様子、どうぞこれをお使いください。 」
そういって、けさは帯の間から、小判を取り出して二人に差し出しました。

「 余計な事かとおもいますが・・。 どうぞ、この土地を、離れるのだけはおやめくださいね。 それよりも、魚屋をやめて蕎麦屋を開いてはいかがでしょう。 お蕎麦は私が打ちますから、どうぞお任せください。 」
けさはそういって、早速、仕事を始めました。

数日後、けさの勧めもあって、二人は蕎麦屋を開きました。
蕎麦屋になったにすけ屋の中からは、美しい歌声が聞えてきます。

♪ さどへー さどーへーと くさーきーも なびーくーよ ♪

蕎麦屋から聞える声につられて、お客さんが集まり始めました。
おけさが打ったそばは、たいへんおいしく、評判でした。
おけさは、良く働き、手がすくと、店に出ては良い声で歌を唄っては客に聴かせてくれます。

♪ さどへー さどーへーと くさーきーも なびーくーよ ♪

おけさの声につられて、店の客は唄ったり踊ったり。
たちまち、にすけ屋は大評判の店へとなって、毎日、大繁盛でした。

半年が過ぎた頃、借りたお金も返し終え、にすけ夫婦も元の暮らしが出来るようになりました。
にすけ夫婦は、これもみんなけさのお陰と、大変ありがたがり、気立ての良いけさを娘にしたいと、毎日のように考え、話すようになりました。

ある日の晩、にすけ夫婦はけさに言いました。
「 おけさや、ありがとうよ。 おけさのお陰で、このにすけ屋は持ち直せた。 おけさ、いつまでもここにいてくれなぁ。 おけさ、わしらの娘になってもらえんじゃろうか。 」
二人がそういうと、おけさはうつむいたまま、話を聞いていました。
そして、二人に言いました。
「 お二人のお気持ちはたいへん嬉しゅうございますが、わたしはじきにこちらをお暇しなければなりません。 」
といって、はらはらと涙を流し始めた。
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(写真は絵本より掲載させていただきました。)
「 お別れに歌を唄いましょう。 」
おけさはそういうと、立ち上がり唄い始めました。

♪ さどへー さどーへーと くさーきーも なびーくーよ
  さどは いよいか すみよいかー ♪

にすけ夫婦の胸は、締め付けられるようでした。
ところがどうでしょう・・、唄っているおけさの姿が、猫のようにも見えてきました。
「 お前は! あさ!! 」

おけさは去りながら、二人にこういいました。
「 だんなさま~、おかみさま~、おわかれでございます。 さようなら・・・。 」
その声を最後に、おけさの姿はパッと消えてしまいました。

「 おけさ~! あさ~! 」
にすけ夫婦は、声をかぎりに、おけさを探し回りましたが、おけさの姿はどこにも見あたりませんでした。
辺りには、波の音だけが響いていました。

「 あさが人間の姿になって、わしら夫婦を助けてくれたんじゃな。 あさや、ありがとうよ。ありがとうよ。 」 二人はそうお礼を言いました。

今も佐渡に残る『さどおけさ』は、おけさが唄った歌だと伝えられています。


※ おけさ節のいわれには、世話になった猫が、美人芸者と成りその身代金を老夫婦に渡し、江戸に出て、深川の料理屋でおけさ節を歌って、評判になるという話もあるそう。少し歌詞が違うようです。


あとがきより(部分引用、省略抜粋)
平安時代の書物「源氏物語」や「枕草子」には、貴重な動物として、また人間と親しい仲であり、関わりの深い動物として猫の記述が多く見られるそうです。
しかし鎌倉時代の書物辺りから、化け猫として登場して説話集に登場し始め、江戸時代になると「鍋島家の猫騒動」「有馬家の猫騒動」などが上演され、たいへんな人気を博したため、猫の妖怪化した話が盛んとなり、各地の伝説や昔話も、たいていが妖怪話となりました。
猫の鋭い爪や特性から魔物とする説もあれば、かわいい姿で描かれたり、幸運をもたらしたり、財宝を招いたり、小判を排出する、客を呼ぶなど縁起よくも描かれます。
信仰では、おそろしい「てん」を退治してくれるとも言われています。





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佐渡おけさ
佐渡市ホームページ(新潟県佐渡市)
佐渡観光協会(Sado Tourism Association)
佐渡おけさ/新潟県公式観光情報サイト にいがた観光ナビ
佐渡おけさ
佐渡おけさ歌詞集

おけさねこ (チャイルド絵本館―日本のどうぶつ昔話)
※参考図書を元に、引用、文章を書いています。写真は絵本より掲載させていただきました。
posted by ひよこ at 18:56| 民話 新潟県 | 更新情報をチェックする