2013年11月07日

七わの白ん鳥(ななわのしらんとり) 沖縄


昔、南の島に、仲の良い、八人のきょうだいが居ました。
一番下が妹で、上の七人はぜんぶ男の子でした。
女の子が一つになったとき、かかさまはしんでしまいました。

ととさんは、一人でとても八人の子供たちを育てられないと、新しいかかさんを迎えました。
そのかかさんは、なんとも美しい人で、ととさんはたいへん気に入っていました。
しかし、子供たちは、どことなく、新しいかかさんがおそろしく思えて、かかさん、かかさんと言うて、甘えることは出来ませんでした。

かかさんの方も、しだいに子供たちにきつくあたるようになりました。
なかでも一番下の女の子を、酷くいじめるようになったのです。

一番上の兄は、妹のことをいつも可哀想に思って心を痛めていました。
亡くなったかかさまにかわって、なんとかだいじにしてやろうと、いつも妹をかばっていました。

妹が七つになったときでした。
かかさんに、赤ちゃんが産まれました。
初めの頃は、子守だというては、妹をだいじにしていましたが、だんだんとまたいじめが酷くなってきました。
兄たちは、もう見てはいられなくなりました。
とうとうきょうだいが集まって、これからのことを相談することにしました。
「ここにおっても、いじめられるばかりじゃ。 どうじゃ、遠いところへ行って、きょうだいだけで、仲良く暮らそうか。」
と、話しをしていました。

ところが、それを新しいかかさんが、こっそり聞いていました。
かかさんは、怒り狂い、
「白ん鳥にでもなって、どこへでも飛んで行け。」
と、一番上の兄に、呪いをかけてしまいました。
すると、上の兄さまは、みるみる白ん鳥の姿になってしまい、きょうだいたちの頭の上を、鳴きながらぐるぐると飛び回りました。

これを見た残りの六人の弟たちは、恐ろしさで震えながらも、
「どうか、兄さんを、元の人間の姿に戻してください。」
と、かかさんに、とりすがり、頼みました。
かかさんは、ますます怒り出して、妹一人を残して、後の六人の兄たちを、みんな白ん鳥にしてしまいました。

残された妹は、兄たちを呼び続けましたが、六羽の白ん鳥は、一番上の兄の白ん鳥を追って飛んで行って、小さくなって消えていきました。

妹は、うちへ帰って泣いていました。
ととさんが帰ってくると、いやにうちの中がひっそりとしているのにびっくりしました。
「どうしたのじゃ。」
と、尋ねましたが、かかさんは黙って、妹を睨みつけました。

それから妹は、朝から晩まで一人で何倍もの仕事をしました。
妹は兄たちが、人間の姿で戻ってきてくれないかと、そのことだけを願って、じっとこらえていました。
そして毎日、山の泉に行っては、禊をして、兄たちのことを祈りました。

ある日のこと、けんめいに祈っているところへ、大きな羽を広げて、一羽の白ん鳥がやってきて、妹の上をぐるぐると回りはじめました。
つづいて、六羽の白ん鳥も飛んできて、ぐるりと妹をとり囲みました。

妹は、白ん鳥たちの姿を見ると、
「兄さん、わたしも一緒に、連れて行ってください。 兄さんたちの行くところへなら、どこでも行きます。」
と、一番大きな白ん鳥に、とりすがって泣きました。
すると、七羽の白ん鳥たちは、かずらを集めてきて、みるみるうちに、網を編み上げました。

そうして、まるで、
「さあ、ここへお入り。」
と、言うように、網を広げました。

妹は、急いで着物を着ると、網の真ん中へと入りました。
網の端っこを白ん鳥たちはしっかりと咥えて、いっせいに空高くへ舞い上がりました。

やがて島を離れて、海の上へとやってきました。
妹は、そぉーっと、目を開けてみました。
そして、大きな声で、
「兄さん!」
と、白ん鳥に向かって叫びました。
すると、一番大きな白ん鳥が、ゆっくりと妹のほうに首を向けて、大きく羽を動かしました。
それを見て、妹は、ほっとして、七羽の白ん鳥の姿をいっしょうけんめい目で追いました。
海を越えて、飛び続けた白ん鳥たちは、やがて小さな島の、小屋の前に降りました。

「やっと、兄さんたちに会えたのに、鳥と人では口もきけない。
いったいどうしたら、兄さんたちは元の姿に戻れるかしら・・・。」
妹はいっしょうけめい考えて、いつの間にか泣きながら眠ってしまいました。

夜が明ける頃でした。
妹は不思議な夢を見たのです。
白い髭を生やしたじいさまが、妹の目の前に立ちました。
そして、
「これ、娘よ。 七人の兄たちを、人間の姿に戻してやりたいのなら、この小屋の前に生えている草を採って、三回咳ばらいをしなさい。
そうすれば、草が一本の糸になる。
その糸で、三日の間に、七枚の着物を織って、兄たちに着せてあげなさい。
そうすると、兄たちは、人間の姿に戻ることができる。
ただ、今から、三日目の朝、明るくなる前に、七枚ぜんぶを織りあげなければ、人間の姿には戻れなくなってしまう。
それから、揃って、港へ行きなさい。
そこには、船があるから、その船に乗れば、そのまま、もとの島にもどれるから。」
と告げました。
妹が、じいさまに、礼を言おうとすると、もう姿はなくなって、夢から覚めた。

妹は、あたたかい兄たちの羽の間から、そぉーっと抜け出し、少し明るくなりかけた外へ出てみると、じいさまが教えてくれた草があった。
一本採っては、三度、咳ばらいをし、また一本採っては、三度、咳ばらいをした。
すっかり夜が明けるころには、腕の中いっぱいに、糸を抱えていた。
それを小屋に持って行くと、直ぐに織り始めた。

次の日も、夜が明ける前に、草を採り、糸にして、休まず織り続けた。
妹の指の先は切れて、血が滲んだ。
それでもなんとか、早くと、心ばかりが焦ってきた。

最後の日になると、手も上がらなくなった。
一糸かけては、深く息をつく。
一糸かけては、手を休め、それでも織り続けた。
そして、とうとう、夜明けまでには、最後の一枚を織りあげた。

妹は、七枚の着物を抱えて、急いで兄たちのところへと駆けて行った。

「さぁ、兄さま、はよう。 これを着て、人間の姿にもどってください。」
そう言って、一枚、一枚を、兄たちに着せかけていった。

すると、目の前に立っているのは、あの白ん鳥ではなく、もとのやさしい兄たちだった。
「兄さま、はよう。 みなとへ行ってください。 そこには、船があります。 その船に乗ると、もとの島に帰れるのです。」

妹のいうとおり、港へ行ってみると、船が繋いであった。

妹と、七人の兄たちを乗せると、船はひとりでに走りだした。
荒い波を乗り越え、きょうだいが、もといた島へと帰ってきた。

みんなが、家の前で足を止めると、かかさんがあっと顔色を変えた。
と、思った途端、その姿は、一羽の白ん鳥となって、鳴きながら空へと飛んで行ってしまった。

それからは、ととさんと、きょうだいたちは一緒に、みんな仲良く、いつまでもくらしました。






参考書籍 日本の民話16 沖縄
     ※参考図書を元に、引用、文章を書いています。
posted by ひよこ at 12:42| 民話 沖縄 | 更新情報をチェックする